そして10年後

前回、スペイン料理に対しての愛情
というものに触れましたが

それを広くとって
スペイン食文化への愛情と言い換えてみると
実は今日の、日本のスペイン料理業界の多様性を
上手く説明できるのかもしれません

ボクはお客さまに
「スペイン料理をヒトコトで言うと?」と
聞かれることがあるのですが・・・

さすがにスペインの食文化は
一つの国の食文化なわけで
ヒトコトではとても言い表せないくらい
多種多様で巨大です

なのでボクら料理人もそれぞれが
スペインの食文化の中でも
愛している側面が違っていて
その切り口の違いが
それぞれのお店の違いになってるんじゃないでしょうか?

自分の愛しているスペインが例えば
「ワインが水より安くって昼間から普通に呑んでる」
「生ハムが天井から一杯ぶら下がっていてメチャメチャ美味しい」
「狭い店内にぎっしり人が入ってすごく活気のあって楽しい」
だったら
その人はいわゆる「スペイン・バル」をするのかもしれないし

「ものすごくプレゼンが綺麗で繊細で最新技術がスゴくて」
「自由に素材を使って芸術的で前衛的な表現をする」
そういうスペインのガストロノミアの側面を好きになったのなら
「モダン・スパニッシュ」に傾倒するのかもしれない

つまりみんなやっぱりスペイン好きなんですよね(笑)

で、本当に好きだったらずっと続けると思うし
良い形で表現し続けると思う
愛情を保ち続けることは簡単ではないけれど
知れば知る程一つの国の食文化は奥深くて
きっと学べばもっと好きになることが出来るはずです

今はバル・ブームということもあって
沢山のスペインと名のつくお店があるけれど
もしブームが去って流行らなくなったらやめるだろうし
もし続けてられるならそれは
お客さんに愛されている良いお店だってことですもんね

そういう意味も込めて
Fシェフの34年間というのは
きっといろんな悲喜こもごもをひっくるめた
スペイン料理への愛情の結果なんだろうなと
一人の料理屋の店主として思いました

CASUAL WINES & DAILY TAPAS VINOVINO